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日本における壁紙の歴史 ~紙文化を軸に西洋との違いを比較解説~

コラム

日本における壁紙文化は海外に比べて浸透が遅かったということが分かっています。
しかし、一概に全てが遅かったという訳ではなく、海外に比べて早く伝わっていた面もあります。
では、日本での壁紙の進化は一体どのように発展していったのでしょうか。
その起源や発展過程を海外と比較しながら辿っていきたいと思います。

 

壁紙が日本に普及したのはいつ?

壁紙は壁画から始まり、『壁紙』と呼ばれるようになるまで、世界で様々な進化を遂げてきました。
実際に現在の壁紙に直結する形で進化することになったのには、紀元前2世紀頃の中国で『紙』の発明が大きく影響しました。ヨーロッパではこの『紙』の存在を皮切りに『壁紙』が発展していきました。

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では、日本ではどのように伝わっていったのか、時代別に見ていきましょう。

縄文時代

縄文時代
現在発見されている最古の『紙』は、地図の描かれた麻の紙で、紀元前2世紀に中国の甘粛省天水市の古墓で発掘されました。在位が紀元前189-141年の前漢文帝・景帝のものと推定されており、放馬灘紙(ほうばたんし)と呼ばれます。

 

弥生時代

弥生時代
『紙』の存在が日本に伝わった時期は曖昧ですが、紀元前3世紀の、この卑弥呼の時代にはすでに伝わっていたとする説があります。実は『紙』の存在はヨーロッパよりも早く日本に伝わっていました。

 

古墳時代 ― 飛鳥時代

古墳時代
610年に高句麗の僧(曇徴)によって、正式な製造法が日本に伝わってきたとされています。
この製造法に関しても、日本の方が早くから触れており、ヨーロッパへの伝達は、シルクロードを経由し時間をかけて広まっていきます。

 

奈良時代 ― 平安時代頃

奈良時代
世界での紙の普及は、8世紀頃に紙の製造法がアラビアに、そして10世紀頃にはエジプトに普及します。
一方、日本ではすでに紙文化の発展がみられましたが、”壁に施工する”という形ではなく、装飾材料として屏風や襖、障子などに使われる形で広まっていきました。

これには、日本の気候や風土などの環境も大きく関係しています。
西洋の建築は、冬の寒さを防ぐため壁を厚くし、なるべく小さな開口部を求める壁の建築でしたが、日本の建築は、夏の蒸し暑さと多雨な気候に対処するため、厚い屋根や深い軒を求める屋根の建築でした。
そして室内もまた、開放的で風通しの良い空間を求めたため、壁の割合は極めて少なくなり、屏風や襖などの開口部が多い構造になったのです。
そのような背景より、必然的に使用箇所が壁以外になったと考えられます。

 

鎌倉時代 - 安土桃山時代

関ケ原の戦い
12世紀になって、地中海を経由した製紙技術がやっとヨーロッパに伝達されます。ここから各地で各々の紙文化が発展していくのですが、日本と西洋とでは、筆記具の違いから異なる発展を見せました。

筆記具について、西洋ではペンと水性インキが主流であったのに対して、中国や日本では筆と墨が主流でした。
そのため、西洋では厚さや表面のなめらかさ、にじみの少なさを重視した紙が浸透したのに対し、日本では薄さや程良いにじみを重視した流し梳きによる薄手の紙が製造されました。なお、この技術は9世紀初頭に確立したとされています。

 

江戸時代

江戸時代
江戸時代には、手作業で行われていた和紙が成熟期を迎えます。
江戸末期になると、西洋の壁装材であった「金唐革」という金箔加工の革壁技術が伝来しますが、日本においては小物加工の材料として使われ普及します。
しかし、この「金唐革」はとても高級品だったため、日本で和紙と箔、漆を使った”金革紙”というものが考案され、生みだされました。

 

明治時代

明治
江戸末期に生まれた「金革紙」は、明治期に近代建築の壁紙として利用されました。
また、これが革とみまがう仕上がりだったこともあり、ヨーロッパへの輸出も始まり人気を誇ります。
そのため日本では量産をもくろみますが、機械を使用した安直な製造法は、品質の悪い安価なプリント壁紙を生み出し、この「金革紙」の需要は激減。後の昭和37年には最後の工場が閉鎖し、製造中止となります。

 

大正 ― 昭和

昭和
戦後、機械化が進み復興建築も盛んになります。
住宅の大量供給や工期短縮が最優先に求められて工事が行われる中で、昭和21年頃、建築家が試みた麻布を壁に張る仕上げが好評となり、布製の壁のブームが訪れます。

また、昭和35年にはコンクリートやモルタルを使用した湿式工法から、石膏ボードなどを使用する乾式工法へと建設の技術転換が行われます。
壁に通気性が求められる湿式工法に対して、乾式工法は通気性を求めないものなので、新たに登場したビニール壁紙がコストが低く施工が簡単なことから急拡大していきます。

 

平成 - 現在

現代
1990年前後、日本ではバブルで景気が弾けた時期。壁紙市場は拡大を続け、平成9年(1996年)には出荷量が8億2千万平方メートルまで及びました。しかし、このころインテリア環境問題が顕在化し、壁紙業界の苦難の道が始まります。

 

環境問題

環境問題
広く普及し始めていたビニール壁紙でしたが、使用されている”有機リン系可逆剤TCEP”には、発がん性疑いが濃厚との情報が露出します。壁紙業界はこの問題に対処しますが、その後も顔料に含まれる重金属や有機溶剤の問題などと、次から次へと環境問題が浮上します。
ついには窮余策として、ドイツで制定された安全品基準RAL(※1)を参考に安全基準を策定し、現在日本の壁紙の業界基準となっているISM基準(※2)とSV規格(※3)を設けます。

※1・・・「RAL基準」は1990年にドイツの壁紙メーカーらによって定められた基準であり、これを満たしていればヨーロッパ標準よりも高品質であることが保障される。
※2・・・「ISM規定」とは、Interior Safety Material規定の略。主に壁紙を中心としたインテリア材料の品質と生活環境の安全に関する規格。
     ISM規格に適合する商品には、ISMマークを表示できる。
※3・・・「SV規格」とは、壁紙製品企画協議会(SV協議会)によって設けられた、壁紙の品質基準の自主規格
     SV規格に適合する壁紙にはSVマークが表示される。壁紙工業会に加盟している会員が製造や販売する壁紙に適用される。

 

デフレ問題

Deflation
平成12年(2000年)を迎える頃、壁紙業界は出荷量は横ばいとなり出荷金額が下落。デフレ問題に直面します。この不況は日本だけでなくドイツなどの海外の壁紙市場でも起こりますが、海外の壁紙市場は日本ほどの大打撃は受けませんでした。

その原因には、またしてもビニール壁紙の存在があります。海外の壁紙市場が、ビニール壁紙のほかにも紙壁紙や織物壁紙、無機質壁紙が3分の1程度と分散しているのに対し、日本はビニール壁紙に特化した市場で、その割合は90%以上を占めていました。

急拡大し量産化されたビニール壁紙は、見本帳サイズの業界統一規格が定められ、収録点数も65点で横並び。使用可能な版数や防汚、抗菌などの機能性付与も制約がかかります。唯一制約のない価格は販売競争の果てに急降下し、業務量に対して利益の上がらない負のスパイラルに陥ってしまったのです。

 

フリース素材導入の遅延

壁施工
2000年、ドイツの壁紙協会が一般消費者が好む壁紙は何かを探り、フリースと呼ばれる不織布の壁紙素材が開発されます。

コストが低く、寸法の安定性や剥離性、耐クラック性に富んだこの素材を壁紙市場に取り入れたドイツの市場はみるみる回復し拡大しました。しかし、日本はすぐにはこのフリース壁紙を取り入れませんでした。これには気候や風土、民族性などの様々な違いが関係します。

西洋人や中国人が狩猟民族なのに対し、日本人は元々農耕民族のため、『溜め込む』習慣が根底にあり、部屋の壁際には棚やタンスなどの収納ニーズが高くありました。
そのため室内が狭い上に物が多く、リフォームを行うにしても業者に依頼するのが一般的でDIYとしての壁紙の張替えは浸透しなかったのです。その結果DIYに最適な性質を持つフリースは、すぐには浸透せず壁紙業界の奮闘は続きました。

 

デジタルプリント壁紙の普及

デジタルプリント壁紙
既述したフリース素材の浸透と共に広がっているのが“デジタルプリント壁紙”です。
デジタルプリントは、版を必要とせず、色数の制限もない印刷技術でプリントできる技術で、壁紙は必要な分だけ小ロットで生産でき在庫を抱える心配もないものでした。
この技術や壁紙の拡大も海外での浸透が早かったため、海外で発明されたと思われがちですが、実は2000年に日本のリンテック株式会社によって開発されていました。日本で浸透しなかった理由は、フリース壁紙の普及が遅かったからです。

デジタルプリント壁紙は写真や画像を使用するのに適していますが、ジョイント部分のズレが目立ちやすいデメリットもあるので、張替えに優れたフリース壁紙の存在がキーワードとなりました。

日本ではこのフリース素材の導入が遅れていたため、技術だけが先行して伝達され、海外の市場で流行していったと考えられます。ちなみに、フリース壁紙の浸透は最近のリフォームブームを経て、やっと浸透し始めているところです。

 

また、ビニール壁紙についてですが、その後の壁紙業界の試行錯誤で品質も改善され、現在でも一番主流な素材として活用されています。

 

現代で主流の壁紙は?

ここまで壁紙の歴史について見てきましたが、以下では現代使われている壁紙の種類を見てみましょう。
今は人々の生活が多種多様となっているため、壁紙の人気は分散しておりさまざまな種類が存在しています。
以下では、代表的な壁紙の種類を5つご紹介します。

 

ビニールクロス

ビニールクロスは、日本で最も広く使われている壁紙です。
塩化ビニール樹脂を原料として製造されており、比較的安価な上に耐久性が高いため、コスパに優れていると言えるでしょう。掃除がしやすいのもメリットです。

加工が容易で、色や柄、エンボス加工の有無などによって、実にさまざまな種類の製品が登場しています。抗菌、防カビ、消臭など、機能性を高めた商品もあります。

 

オレフィンクロス

オレフィンはプラスチックの一種です。
ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂が主原料となっており、ビニールクロスに似た性質を持っています。木目調、石目調など、柄の種類も豊富にあります。
オレフィンは燃やしても有害ガスが出ないため、環境に優しい素材として普及してきました。ビニールクロスよりも高価ではありますが、安全性を重視する方にはおすすめです。

 

紙クロス

紙クロスには、パルプを使用した洋紙タイプ、和紙を原料とするミツマタ、非木材紙を使用したケナフ、表面にフィルム加工などを施した合成紙タイプなどがあります。
洋紙タイプは華美な柄も数多くあり、部屋に個性を出したい人におすすめです。
和紙タイプは上品で高級感のある印象に仕上がりますので、和室や客間に最適でしょう。

紙クロスは比較的デリケートで、水拭きができないタイプもありますので、お手入れをする際には注意しましょう。また、他の壁紙と比べると薄いため施工の難易度は高めで、紙クロスに慣れた業者に依頼する必要があります。

 

布クロス

布クロスには、木綿、麻などの自然素材のものや化学繊維を組み合わせて製造する不織布壁紙織物、シルク素材、サテン素材があります。
高級感や重厚感がある上に頑丈で破れにくいため、ホテルなどでも多く採用されています。優れた吸湿性や放湿性があるのもメリットです。布クロスは埃が付着しやすいため、はたきでの掃除が必要で水拭きをすると逆に埃が付きやすくなります。また、火には弱いのでキッチンの内装には不向きといえるでしょう。

 

無機質系クロス

無機質系クロスは、珪藻土や漆喰などの自然素材の土やガラス繊維などを原料にして作られる壁紙です。素材が不燃性のものであるため、防火性に優れています。
塗装した壁のようなザラザラとした質感があり、独特の色合いや奥行きを表現できます。部屋の空間にモダンな雰囲気を出したい人にもおすすめです。

注意点としては、水に弱いため掃除は乾拭きで行う必要があること、シミができると落ちにくいことがあります。無機質系クロスは施工業者によって仕上がりに差が出やすいため、技術力のある業者を選びましょう。

 

弊社で取り扱っている壁紙紹介(素材)

弊社の壁紙は、プロ向けの「不燃塩ビ」とDIYでもご使用いただける「フリース(不織布)」の2つの素材からお選びいただけます。

不燃塩ビの壁紙について

弊社の不燃塩ビの壁紙は、安心の完全国産品です。
国土交通省の防火認定を不燃・準不燃ともに取得しています。
シックハウス症候群の原因となり、発がん性を指摘されている「ホルムアルデヒド」の発散が最も少ないことを示す「特級F☆☆☆☆認定」も受けています。

菌の増殖を大幅に軽減し、24時間で基準値以下まで消滅させる抗菌効果もあります。
表面が滑らかで発色がよく、擦過性に優れているため、繊細で細やかな柄でも美しい表現が可能です。

フリース(不織布)の壁紙について

フリース(不織布)壁紙は、パルプとポリエステルなどの化学繊維を3次元に絡ませて作られており、強度が高くて破れにくいです。
直接壁面に糊を塗って貼ることができるため、壁紙の裏に糊を塗る必要がなく、簡単に施工できます。
ビニール製や紙製の壁紙は糊を塗ると約1%伸びるため目開きが起こりやすいのですが、フリースは水を含んだ時の伸び率が非常に小さく目開きが起こりにくいというメリットもあります。

その他の素材の希望がありましたら、別途ご相談いただけます。
施工面の場所や材質、使用用途に応じてご提案させていただきます。

 

詳しくはこちら▶「デザイン壁紙販売サイト「Arms」|壁紙の仕様

 


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