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壁紙の歴史とは?その進化の過程を解説【世界編】

コラム

私たちの生活に当たり前にある壁紙。普通にすごしていると特別意識することもなく、いつから存在し、どんな歴史があるのか知らない方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、壁紙の起源や壁紙の歴史を紐解きます。また、現在一般的に使われている壁紙の種類とその特徴についても解説します。この記事を通して、私たちにとって身近な存在である壁紙についての理解を深めましょう。

壁紙の歴史

テキスタイルのあるお部屋壁紙の歴史や起源について、ヨーロッパ説と中国説の、どちらかで語られていることが多いのですが、今回は両面からどのように発展していったのか、詳しく見ていきたいと思います。
では、さっそく見ていきましょう。

 

 

壁紙誕生まで

先史時代の壁画ここでは、壁紙が壁紙として存在するまでのルーツを解説します。

 

 

●壁面装飾のはじまり

室内最初の壁画

人類最初の壁画装飾は、2万年前~1万5千年前の旧石器時代の洞窟壁画です。
フランス南部のラスコー洞窟やスペイン北部のアルタミラ洞窟に、旧石器人の描いた野牛や鹿の壁画が残っており、こちらが壁紙へ発展していきます。
また、住居内に描かれた最初の壁画は約8000年前にトルコのチャタルフック遺跡内で発見され、神殿と思われる建物の壁に雄牛が描かれたものでした。この当時の壁画は、“装飾”の用途ではなく“呪術(※)”として描かれていたようです。壁画が装飾の用途として描かれたのは、5000年前に海洋民族がフレスコ技法で描いたイルカやタコの絵がはじめとされています。

※洞窟壁画の呪術説は、豊饒呪術なども含め多岐にわたる総合的な仮説です。例えば狩猟呪術は、実際の狩猟で槍が獲物に当たりやすくなるよう、獲物となる大型動物の絵を描き、そこに槍先のような記号を描き加えたりすることという解釈です。(参考文献:洞窟壁画「解釈」の試み/小川 勝― 統合研究による表象論にもとづいて ―

 

●壁面への布素材の介入

室内に吊るされたタペストリー

1347年ヨーロッパで黒死病というものが大流行し、当時8000万人と推定される欧州人口の4割が犠牲に。人類史上第1位と言っても良い大災害が起こりました。
当時の住居は断熱性が低く、冬の寒さをしのぐためにも部屋の壁面にタペストリーを吊るすのが一般的でした。しかし、このタペストリーこそが黒死病の原因となっていたのです。
当時のタペストリーはとても重く洗濯できない上に、裏側にホコリや塵が溜まりやすく、しばしばペスト菌(黒死病の原因)を持ったクマネズミが住処としていました。この因果に気づいた人々は、タペストリーの代替品としてベルベットなどの厚手織物を窓以外の壁面全体に天井から吊るす形をとります。これが壁紙やカーテンのルーツとなる壁布です。

 

●壁面への紙素材の介入

紙漉き画像

紙は紀元前2世紀頃の中国で発明されました。
1368年 ― 1644年  [明の時代]の中国国内では、すでに内装デザインとして壁紙を貼る習慣があったともされています。
この紙の存在が日本へは610年に高句麗経由で伝来。西方へ伝わるのには少し時間がかかり、シルクロード経由で諸国を渡り10世紀にアフリカ、その後またモロッコを経て12世紀中頃にやっとヨーロッパへ伝わります。ヨーロッパでは、この紙の伝来を機に、製紙法や印刷技術が発展し、15世紀中ごろに壁紙が誕生したと推定されています。

 

壁紙の発展

ここからは壁紙がどのようにして発展していったのか、見ていきます。

1501年 – 1600年  [16世紀ごろ]

製紙や印刷の技術が進歩したことを皮切りに、ヨーロッパの主要な国で、内装仕上げ材としての壁紙が次々と普及していきます。なお、それまでの主な室内装飾材料はフレスコ画、毛織物、革壁などで、限られた場所にだけ使われるものでした。

ケンブリッジフラグメントオリジナル柄画像
※現在残っている壁紙で最古のものは、紙に一色刷りされた”ざくろのモチーフ”を様式化した柄です。こちらは1509年にケンブリッジで発見されました。

 

1601年 – 1700年  [17世紀]

この頃には、壁紙はロール紙として作られるようになりました。
それまでの壁紙は、約40cm×約50cmの小さな紙にプリントされていましたが、シートをつなぎ合わせ、長いロール紙として作られるようになったので、大きなリピートで大胆なデザインが可能になります。また、木版印刷(ブロックプリント)も発達し、壁紙業界は繁栄していきます。

ロール紙

 

1701年 – 1800年  [18世紀]

ロール紙やブロックプリントにより、壁紙が充実し需要も増えます。その人気ぶりにイギリスでは政府が財源の可能性を見込み、壁紙税(※)が課せられるようにもなりました。そうして一気に高級品になった壁紙の価格は高騰しますが、美しく優美なパターン(柄)を室内に装飾するのが特に富裕層の間で流行り、インテリアとしての需要はさらに増加していきます。※後の1836年に廃止。

ダマスク柄のブロックプリント

 

1801年 – 1900年  [19世紀]

このヴィクトリア朝の時代には、様々な壁紙革命がおこりました。

1789年フランス人のジョゼフ・デュフォーによりパノラマ壁紙の制作が開始されます。パノラマ壁紙とは、円形に絵をレイアウトし、自分を取り巻くように異国の風景など描いたものです。8年後ドイツ人のジーン・ズベールによって、さらなるパノラマ壁紙の開発が行われ、ギリシャ・ローマ神話や戦闘場面などの様々なテーマの壁紙が生み出されました。壁紙はより装飾芸術としての価値を見出しました。※ズベール社はジーン・ズベールがパノラマ壁紙の開発を行ってできた現代でも既存の企業

1838年頃の産業革命期、それまでブロックプリントが主な製造手段であった壁紙業界でしたが、イギリス・ランカシャー州のダーウェンという町で綿工業が発達。『サーフェスプリント印刷機』が発明されました。これはブロックプリントの質感を持ちながらも、版を必要としないため、より多くの壁紙を製造を可能にしました。また、この技術革新により壁紙価格が落ち着き、一般層にとっても身近なものとして広がり始めます。

しかし、そんな技術革新による産業革命がおこった一方で、大量生産により安価で質の低い商品が増加。イギリスの「モダンデザインの父」”ウィリアム・モリス”はアーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement)を行います。モリスは中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張しました。その影響も相まって、壁紙の付加価値である“エンボス加工” や “ボーダー” などの装飾部材、多色刷りが可能な印刷機器などの技術も、さらに勢いづいて発展していきます。

ウィリアムモリスデザイン壁紙

 

1901年 ― 2000年  [20世紀]

第2次世界大戦後、壁紙市場で革命的な2つの変化がありました。
1つは高分子化学系のビニル素材が壁紙として使われるようになったこと。もう1つは大量生産に適し、優れた印刷速度をもつグラビア印刷やロータリースクリーン印刷が登場したことです。
特に塩化ビニル樹脂の素材(塩ビ素材)は、コストが安く、メンテナンス性に優れているだけでなく、エンボス再現性や印刷適性にも優れており、イギリスやドイツはいち早くこの素材を起用して生産性を高めました。

フリース壁紙

さらに1990年代に入るとフリースと呼ばれる不織布の壁紙素材が開発されます。従来の不織布がポリエステル100%なのに対して、新しく開発されたフリースは、セルロース繊維75%ポリエステル25%ほどの割合で配合されています。この素材は、伸縮が少なく、接着剤で簡単に施工できます。張り起こしても2~3回は支障がなく、また表面に塩ビ樹脂を薄くコーティングすることで、引張や引裂き強度にも優れ、剥離性能までも担保できるため、自分で壁紙を貼る習慣のあるヨーロッパ市場ではあっという間に浸透しました。ただし、日本では専門家に依頼するスタイルが定着しており、このフリース素材は現在もなお浸透しきれてはいません。

▶西洋と日本の美意識の違いをもっと知る

 

2001年以降

2000年以降はアクセントウォールが流行し始め、小ロットで迅速に対応できるデジタルプリント壁紙が誕生
当時世界最大であるテキスタイル見本市 “ハイムテキスタイル” で、2002年にフリース壁紙が登場し、壁の一面だけでもデザイン壁紙を貼ろうという動きがはじまります。これに伴って居住空間や生活空間を他人と差別化したいというカスタム化志向の人も増加しますが、アクセントウォールの部分的な使用に際して、それまでの大量生産に特化したグラビア印刷では小ロット対応が不可能でした。そこで生まれたのがデジタルプリントです。

デジタルプリント壁紙は版を必要とせず、プリントしたい柄をコンピューターに取り込み、必要な分だけ大型のインクジェットプリンタで出力します。色数制限やメーター数の制限がもなく、小ロット対応が可能なため、展開次第では在庫を抱える必要もありません。また、デザイン面においても表現の可能性が広がり、多様なバリエーションが生まれました。

そして、2010年頃から、ヨーロッパのテキスタイルと壁紙のブランド各社が、コレクションにデジタルプリントを少しずつ展開し始めます。壁紙自体にトレンド性を含み、需要の高いヨーロッパにおいては、デジタルプリント壁紙はすぐに重要な要素とし浸透しました。日本においては遅れはとっているものの、近年訪れたリノベーションブームの到来などにより、このデジタルプリントの需要は年々高まっています。

デジタルプリント風景

 

まとめ

今回は、壁紙の歴史にフォーカスしてみました。
こうしてみると、最初から壁紙として誕生したわけではなく、様々な要因や、別のアイテムからアイディアを経て生まれたことが分かります。
なにげなく身近にある壁紙ですが、経緯や発展を知るとさらに面白いですよね。

近年ではインテリアのトレンドとして、自然を感じるもの懐かしさや親しみを感じるもの、温かみがあるものが好まれる傾向にあり、ナチュラルヴィンテージレトロな雰囲気の柄が人気です。同時にオリジナリティが求められる時代となっており、Armsの中でも特にオリジナルで壁紙を作りたいというお客様が増えています。
このオリジナル壁紙を好む傾向を改めて見直すと、まさに昔でいうパノラマ壁紙に取り組んでいた動きに似ているような気もします。

壁紙の使い方も、昔は壁に限らず使用されていたことが分かりました。
最近では「壁紙」という言葉が浸透し、壁に使うものという固定観念があるため、壁紙自体を別のアイテムに使うことが斬新なように思えていました。
むしろ、カテゴリにとらわれず「開発」に勤しんでいた昔の方が柔軟に応用していたのかもしれませんね。

新しいアイディアと過去の知恵。
モノづくりにおいて、この両面から意識を高めることで、これからの壁紙はさらに発展を遂げていけるかもしれません。

弊社のスタッフも、毎日壁紙に携われる立場として、これからの壁紙の発展を観察していきたいと思います!
そして、先頭をきって皆様に新たな情報やサービスをお届け出来たらと思いますので、楽しみにしていてください。

▶オリジナル壁紙

 


 

弊社で取り扱っている壁紙紹介(素材)

弊社の壁紙は、プロ向けの「不燃塩ビ」とDIYでもご使用いただける「フリース(不織布)」の2つの素材からお選びいただけます。

不燃塩ビの壁紙について

弊社の不燃塩ビの壁紙は、安心の完全国産品です。
国土交通省の防火認定を不燃・準不燃ともに取得しています。
シックハウス症候群の原因となり、発がん性を指摘されている「ホルムアルデヒド」の発散が最も少ないことを示す「特級F☆☆☆☆認定」も受けています。
菌の増殖を大幅に軽減し、24時間で基準値以下まで消滅させる抗菌効果もあります。
表面が滑らかで発色がよく、擦過性に優れているため、繊細で細やかな柄でも美しい表現が可能です。

フリース(不織布)の壁紙について

フリース(不織布)壁紙は、パルプとポリエステルなどの化学繊維を3次元に絡ませて作られており、強度が高くて破れにくいです。
直接壁面に糊を塗って貼ることができるため、壁紙の裏に糊を塗る必要がなく、簡単に施工できます。
ビニール製や紙製の壁紙は糊を塗ると約1%伸びるため目開きが起こりやすいのですが、フリースは水を含んだ時の伸び率が非常に小さく目開きが起こりにくいというメリットもあります。
その他の素材の希望がありましたら、別途ご相談いただけます。
施工面の場所や材質、使用用途に応じてご提案させていただきます。

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